研究用マウスの不安を抑える
「ネイチャーメソッズ」に掲載された最近の論文によると、研究用マウスのハンドリングの方法は恐れや不安といったマウスの行動に負の影響をおよぼすので、重大な注意が必要だという。大切な実験結果が変わりうるのである。

実験の目的によってマウスを拘束するには異なった方法がある。通常は尾の先ではなく、中央あたりを持ってマウスを持ち上げる。この単純な方法で、マウスを別のケージや秤量天秤に移したり、性別を調べたり、ケージの金網の蓋の上で持ち上げてよく観察することができる。

現在、研究者たちは、尾を持ってマウスを持ち上げることがマウスに不安やストレスを生じ、実験結果に影響を及ぼし得ることに気づいていない。これに対し、英国Liverpool大学、Institute of Integrative BiologyのJane HurstとRebecca Westはこのマウスに忌避と高度の不安を引き起こす問題を防ぐ2種類の方法を発見した。

最初に考案した方法は、ケージの中に備えつけてあるトンネルを使って、マウスを直接触れることなく扱うことである。第二の方法は、手を器にしてマウスを拘束することなく、手の中で自由に歩かせることである。この方法では験者は初めてのときには30秒ほどマウスを囲った手を閉じて、マウスを慣れさせるのが好ましい。この“カッピング”法の慣れていないマウスは手から飛び出してしまうからである。

マウスの不安やストレスを測定するには、排尿や脱糞がパラメータとしてよく用いられる。研究者たちは三種類のハンドリング方法を雄と雌、また異なる系統のマウス [BALB/c, C57BL/6 and ICR (CD-1)]を用いて検討した。というのはこれらマウスの違いで反応が異なる可能性があるからである。

9回目の毎日のセッションで、これらマウスは尾の保持、ケージトンネル、手カップ法の三種すべての方法で一定の自発的な関わり動作を見せた。新しい二つの方法に比べ、尾を持つ方法ではマウスのハンドリング中の験者との関わり動作が少なく、より多くの排尿と脱糞がみられた。また、応答は概日周期の明と闇のサイクルで同じで、験者の熟練度には依存していなかった。

研究者たちはこれら新しい方法に異なる利点を見出した。験者がトンネルやカップによってマウスを手に乗せれば、例えば腹側の表面や肛門性器を観察するために尾を持ち上げても不安やストレスを軽減することができる。また、マウスの首の周りをつかんだ場合でも同じような反応がみられた。

尾を持ってマウスを持ち上げることは研究室で普通に行われているために、科学者たちはマウスの不安反応が実験結果に影響するとは思っていない。彼らはこれらの反応をただ「正常」として評価しているのである。ところがこの研究ではマウスのハンドリング方法は、マウスの不安やストレス反応といった行動に、そして実験結果に重大な影響を及ぼすことを示した。

研究者はまた、強い不安反応は、特定の実験、ケージのトンネルが必要な場合、オープンメソッドのまた、研究者たちは強いストレス反応が必要とされる特殊な実験系においては、トンネルや手カップは勧められないとしている。

トンネルや手カップでマウスを運ぶハンドリング方法は、実験内のバラツキを減らし、実験の再現性をよくするために、非常に有効な選択肢だと思われる。

Hurst教授はマウスのハンドリング法の重要性を以下のように結論づけている。「実験動物のルーチンのハンドリングは重要である。だからこそ、ストレスや不安を減じるためにはできるだけのことをする必要がある。不安を最小限に抑えられる方法を用いれば、困惑させる要因を減らし、実験中の反応を改善することで、頑強な科学的成果を生み出すのである。

最近の更新 : 2011-11-30